2012年3月20日火曜日

羽海野チカ「3月のライオン」1巻に出てくる将棋の戦法について教えて下さい。

羽海野チカ「3月のライオン」1巻に出てくる将棋の戦法について教えて下さい。
ご覧頂きまして、ありがとうございます。

羽海野チカさんの「3月のライオン」1巻、P.136~137において、居飛車党の二階堂君が「一手損角換わり」を「このままのさばらせておくわけにはいかない!」と桐山君に言い、「じゃあ振飛車指せば良いじゃん」と言い返されているシーンがあります。



私は将棋初心者なので、このシーンの意味が良く分かりませんでした。調べてみたのですが難しかったです。

どなたか「一手損角換わり」「居飛車」「振飛車」という戦法の意味、そしてどうして振飛車の方が一手損~には有効なのか、分かり易く教えて頂けると嬉しいです。

お礼にコイン500枚差し上げます。よろしくお願い致します。


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これは確かに、将棋の戦法に相当精通していないと理解できないやりとりかもしれませんね。



「居飛車」とは飛車を最初の位置(先手なら2筋)に置いたまま戦う戦法です。一般的にはこの場合、自分の玉は中央から左側に持って行くため、自陣の右側が攻撃陣、左側が守備陣、という形になることが多くなります。

「振り飛車」とは序盤で飛車を自陣の左側に持って行く戦法です。これは逆に自陣の右側が守備陣、左側が攻撃陣となります。



先手後手両方が居飛車にする戦型を「相居飛車」、どちらか片方が居飛車、もう片方が振り飛車にする戦型を「対抗型」と呼びます。

将棋の戦型は大きく分ければ、「相居飛車」「対抗型」「相振り飛車(両方が振り飛車)」の3つに分類することができます。



「相居飛車」の中にもさまざまな戦法があるのですが、後手番の立場で考えたときには、(1)先手の誘導に従って、それに追随していく戦法と、(2)序盤で少しリスクを犯して、後手番が局面を誘導していく戦法 の二つに分けることができます。

「一手損角換わり」は、序盤で「一手損」というリスクを負うということで(2)に該当します。





二海堂君の「のさばらせておくわけには・・・」というのは、「序盤で明らかに目に見える形で損をしているのだから、必ず先手有利にする方法があるはずだ」という意味です。

桐山君の「じゃあ・・・」というのは、マンガの雰囲気でお分かりかとは思いますが、ちょっと冗談めかした表現なのです。つまり「振り飛車にしてしまえば、そもそも相居飛車にはならないのだから、一手損角換わりという戦法に遭遇することはありえないじゃないか」という意味です。

要するに二海堂君が一つの局面に限定して「何が何でも解明しなければ」と意気込んでいるのに対し、桐山君は「将棋ってのはいろんな局面があるんだから、一つのことでそんなにこだわるなよ」という、ちょっと突き放したスタンスを取っている、ということなのです。



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第一に将棋の二大戦法は「居飛車」と「振り飛車」です。居飛車は飛車を右側において戦う戦法、振り飛車は左側において戦う戦法です。戦後の将棋の歴史はこの二大戦法の抗争史です。



そして第二に将棋は一般的に先手がほんのちょっと有利と考えられています。後手はあれこれと工夫をして先手の有利を帳消しにする戦法を編み出そうとします。それが現代の後手番戦法御三家「一手損角換わり」「ゴキゲン中飛車」「横歩取り85飛車」です。どれも本質的には後手がほんのちょっと不利だけれども、その不利を実戦上は帳消しにしてしまえるような理論を持った戦法です。



「一手損角換わり」は後手番なのにわざわざ手損をして角を交換しようとする戦法。そして、相居飛車(お互いに居飛車で戦う)場合の戦法です。プロ棋士は手損を極端に嫌います。それなのにわざわざ後手(一手損をしている)ほうからさらに損をして、それで後手がよくなるなんて戦法はありえない!許さん!絶対に何か穴があるはずだと、二階堂君は言っているわけです。確かに同じような意見を持つ人は多いですね。理論的にはその通り。でも理論と実戦は違うというのは将棋の世界の常識です。



相居飛車の戦法である以上、振り飛車相手にこの戦法は使えません。明らかに不利になるというのが確かめられているからです。先手の振り飛車側に後手の居飛車が一手損をして角交換したら、まあ大体不利になります。アマチュアレベルでは微差で、終盤でいくらでもひっくり返せる差でしょうが、プロ同士では致命傷になる傷なのです。だから「振り飛車やればいいじゃん」なのです。わかっていただけましたでしょうか?


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用語の説明をすると、「居飛車」というのは、飛車を最初位置からあまり動かさずに、戦う戦い方で、だいたい右半分に飛車がいる戦法全般をいいます。

振り飛車は、逆に序盤早々から飛車を左側に動かします。この動かすことを「振る」といって、飛車を「振る」ので、「振り飛車」といわれています。



角代わりと呼ばれる戦法は、この「居飛車」に分類される戦法です。

序盤の早い段階で角を交換するので、「角代わり」と呼ばれてます。

一手損角代わりは、この角代わりの一種です。

初手から、7六歩、3四歩、2五歩、8八角なり、同銀と進んだとします。

このときの盤面を見てほしいのですが、先手は、2五歩、7六歩、8八銀と3つ駒が動いているのに、後手は、3四歩しかうごいてませんよね?

つぎは、後手の番ですから、仮に8四歩としても、1手分少ない計算になります。

これが、手損と呼ばれる物で、1手少ないから、一手損と呼ばれてます。



二海堂くんが、「振り飛車にすれば良いじゃん」というのは、振り飛車は、通常角交換を避けて、角道を止めるので、角代わりの戦いにはならない。角代わりをしないようにすれば、その戦型にならないから考えなくて良いという意味です。

けど、桐山くんは、居飛車を指したいし、「角代わりを避けるのは、男が廃る。正面からたたきつぶしたい」と考えていての発言だと思います。





簡単な用語の説明だけですけど、参考になれば幸いです。

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